衛星ビジネスを脅かす『スペースデブリ』の現状と課題について考えてみた

皆さんは、1999年から2004年にモーニングで連載された漫画『プラネテス』をご存じでしょうか?

2003年にはNHKでアニメ版が放送され、当時、学生だった私は毎週楽しみに見ていました。

舞台は2070年代、人類が宇宙開発を進める中、宇宙に散らばったゴミ(スペースデブリ)が社会問題となっており、主人公のハチマキ(星野八郎太)は宇宙ステーションで、このスペースデブリ(宇宙ゴミ)回収を仕事にしている職業宇宙飛行士として描かれていました。

そんな『プラネテス』で取り上げられていたスペースデブリ(宇宙ゴミ)の問題が、今、現実のものになろうとしています。※プラネテスを知らない方は下記画像リンク参照ください!

プラネタス、ぜひ見てほしい 画像の引用元:http://origin.morningmanga.com/news/654

スペースデブリ(宇宙ゴミ)とは?

イメージビデオ「スペースデブリリムーバル」より引用 ©JAXA

スペースデブリ(宇宙ゴミ)の正体は、過去に打ち上げた宇宙船の燃料タンクや運用終了し放置された人工衛星など、つまり人間の出したゴミです。

『プラネテス』を見て初めて知ったスペースデブリという言葉ですが、現実にも宇宙にはデブリが無数に存在しています。

ISS(国際宇宙ステーション)では、デブリを避ける為、10cm以上のデブリを観測し、その軌道をデータ化しています。登録・公開されている大きさ約10cm以上の物体だけで約20,000個以上あるといわれており、10cm未満1cm以上のものも含めると約50万個以上にものぼります。

たとえ5〜10mmの一見小さいデブリでも、一つ一つが秒速7-8kmという超高速で移動しているため、宇宙船に衝突すると、弾丸を撃ち込まれるのと同じ被害が出るとされています。

技術の進歩によりデブリの軌道計算が細やかに行えるようになった事で、国際宇宙ステーション(ISS)では、10cm以上のデブリに対しては軌道変更して避けていますが、

今後、民間企業の運用する人工衛星の台数が増えていくと、デブリと衛星の衝突事故などのリスクが高まります。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)から引き起こされるリスク・影響

スペースデブリ(宇宙ゴミ)問題を放置するリスクとは?

スペース・デブリによって引き起こされる最も危惧されるべき問題は、デブリの散乱による他の衛星との衝突事故です。

宇宙環境がデブリによって汚染されることが問題なのではなく、各国の宇宙活動に対して生ずる損害の発生をいかに防止するかという安全保障的側面に力点が置かれるべきです。

実際に、デブリによる宇宙空間での衝突事故・未遂は何度か発生しています。

2009年には米国の商用衛星通信システム「イリジウム」の衛星1機が、運用を終了していたロシアの通信衛星と衝突し機能能停止に陥ったという事故も発生しています。

また、つい最近だと、2020年9月23日、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)において未確認のスペースデブリ(宇宙ゴミ)との接近を回避するための軌道変更(デブリ回避操作)が実施されたことを発表しました。

ISSがデブリと衝突する危険性が高い「レッドゾーン」にあったとしており、緊急の回避操作が必要と判断されたとしています。

ISSに滞在している第63次長期滞在クルーの宇宙飛行士3名は万が一の場合に備えて「ソユーズ」宇宙船がドッキングしているISS後方のロシア区画で待機していましたが、実際に飛行士たちが危険にさらされることはなく、デブリは同日7時21分にISSから1.39km以内を通過していったとされています。

NASAのジム・ブライデンスタイン長官によると、ISSのデブリ回避操作は今年に入って3回実施されたといいますが、ISSとの衝突が懸念される危険度の高いデブリの接近は過去2週間だけでも3件あったといいます。

今回ISSに接近したデブリは2018年に打ち上げられた三菱重工の「H-IIA」ロケット40号機に由来するものだとされていますが、H-IIAに限らず、打ち上げに使われたロケットの一部や何らかの理由で運用を終えた人工衛星がデブリ化する問題は、どのロケットや衛星でも起こり得ます。

今後の衛星ビジネスへの影響

実際に運用中の人工衛星にデブリが衝突したケースはほとんどありませんし、今現在、すでに宇宙がゴミだらけで宇宙船や衛星を飛ばせないほどの段階ではありません。

必要以上にスペースデブリの問題を過剰に取り上げ、危機感を煽ることはナンセンスです。しかし、一方で、このままこの問題を放置するわけにもいきません。

世界の小型・超小型人工衛星の需要が順調に推移すれば、今後10年間で10,000機以上の人工衛星が新たに運用開始される見込みです。

企業名機数
OneWeb社(米)900機超
Space X社(米)4000機超
Planet社(米)100機超
BlackSky Global社(米)約60機
Axelspace社(日本)約50機
運用中及び計画されている主な小型衛星 引用元:H30年経済産業省調査

世界の小型・超小型衛星需要調査結果
引用元:ユーロコンサル日本事務所『小型・超小型衛星の打上げ需要調査 概略版』


近年ではスペースXの『スターリンク』のように数千~数万の衛星で構成される衛星コンステレーションが構築されつつありますし、衛星と衛星、あるいは衛星とデブリの衝突に対する懸念が高まっています。

地上からの高度別に見てみると、地球観測に適した比較的低い軌道(高度:500~1,700km付近)にデブリが密集していることがわかっており、今後、民間企業の参入が加速するとされている観測衛星(高度500~1500km)や、国際宇宙ステーション(ISS)への影響が危惧されます。

高度軌道に存在する物体
約36,000km静止衛星(通信・放送衛星、気象衛星)
約32,000~40,000km測位衛星(準天頂衛星)
約20,000kmGPS衛星
約500~1,500km観測衛星
約400km国際宇宙ステーション(ISS)
約10kmジェット飛行機
参考:地上からの高度毎に存在する物体
溜池ジロ

日本発の宇宙ベンチャーであるPDエアロスペースや、SPACE WALKERが開発している宇宙飛行機の航行経路(高度100km程度)に影響がないのか気になります。。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)に関する現状と課題

最大の問題は『スペースデブリを規制する包括的なルールが無いこと』

現状、スペースデブリ問題を抑制・防止する法的拘束力のある包括的なルールはまだありません。

2007年に制定された国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)によるスペースデブリ低減ガイドラインには『運用終了した衛星等は管理された方法で軌道から除去すること、それが不可能ならば、低軌道領域への長期的滞在を避ける軌道に廃棄すること』との文言がありますが、衛星の保有・管理者が具体的に実施すべき項目等の取り決めがなく、法的拘束力もありません。(10年以上何やってるんですか!仕事してください!)

例えば、運用終了(燃料がなくなり制御不能になる)までに、軌道から離脱することを義務付ける法律を策定し、それに対応しない場合は刑罰を設けるなど、まずは、事故の危険性のあるデブリを生まないための対策、交通管制のルールづくりなどを進め、安全に安定的に衛星ビジネスを運用できる環境を整えることが重要です。

現状、スペースデブリ問題に対して、一丁目一番地、まずやるべき事は、『法的拘束力のある国際的なルール作り』と考えます。

引用元:H30 スペースデブリ対策の取組について
内閣府宇宙開発戦略推進事務局

とはいえ、いずれ遅かれ早かれ、デブリ回収・除去技術が新たな宇宙事業として需要拡大していくことは容易に予想でき、アストロスケールや川崎重工業、JAXAなどのように技術開発・実証を推し進めていく動きは必要不可欠です。

新たな市場の創出と国際競争力の確保のために、官民一体となって頑張っていただきたい!個人的に、やっていること、技術は非常に面白い内容なので、応援したいです。

私は元々電機メーカーで半導体関連のエンジニアをしていましたが、ぶっちゃけ半導体製造会社の延命に何千億という資金注入するなら、そのお金を宇宙ベンチャ―にもっと分けてほしいです。(デブリ回収・除去技術に取り組んでいる企業等については別途記事にしたいと思います!)

溜池ジロ

『プラネテス』ファンとしては、実写版デブリ屋を実現してほしい気持ちもありますが、、

国際的なルールが未成熟な中、技術競争を民間に行わせて、その後規制強化。というのは利権が大きく絡んでいそうで面白くないですね。。

まとめ

✔今回の記事のまとめ
  • スペースデブリ(宇宙ゴミ)は、過去に打ち上げた宇宙船の燃料タンクや人工衛星
  • 今後衛星ビジネスの需要が増大すると、デブリと衛星の衝突リスクが高まる
  • 最優先はデブリを生まない、増やさない包括的なルール作り
  • 将来の需要拡大に備え、デブリ回収・除去技術の開発・実証は必須

今回は『スペースデブリ問題』について考えてみました。今後、宇宙産業が拡大していく中で避けて通れない問題ですし、新規事業の創出を目指してこの問題に取り組み始めている企業もあります。

国際的なルールのない中、デブリの回収・除去技術にばかりがフォーカスされることには疑問を感じますが、一方で、純粋にデブリ回収のために開発・実験されている最新技術には興味があります。

デブリ回収・除去技術と、関連企業については別途記事にしたいと思います!デブリ回収技術に開発を進めている民間企業アストロスケールについては過去記事でも取り上げています。

ここまで目を通していただきありがとうございました!

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